2018/05/14

カテゴリー: 推し事
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賀来ゆうじさんデビュー作『おもいで税関』が好きすぎるのでレビューっぽいものを書いてみる

 
(本記事に記載の内容は2018年5月14日現在のものとなります)
 
突然ですが、賀来(かく)ゆうじさんという漫画家をご存知でしょうか。
 
 
2018年1月22日より、ジャンプ+にて地獄楽(ジゴクラク)という作品を連載している方です。
 
『地獄楽』は連載開始直後からその設定、キャラクター、ストーリー、絵柄、すべてにおいて高い完成度が大きな話題となりました。
現在もジャンプ+屈指の注目作として人気を博しています。
 
それを描いているのが賀来ゆうじさん。
 
ジャンプSQ.の新人賞でデビューし、『ファイアパンチ』の藤本タツキさんのアシスタント、ジャンプSQ.での『FANTASMA』の連載、その他多くの読切作品の掲載を経験している作家です。
つるの剛士さんの従兄弟でもあるそうです。
 
 
■Twitter:@ug_kaku
作品の告知や宣伝のほか、原稿のメイキングなども見ることができます。
(僕もときどきイラストの制作過程をブログに上げることがあるのですが、これは賀来さんの影響だったりします)
 
 
『地獄楽』は毎週月曜日に更新されるのですが、5月14日(月)は休載。
 
 
その代わり、賀来ゆうじさんのデビュー作である『おもいで税関』という読切作品が掲載されました。
 
 
今回は、この『おもいで税関』という作品について書いていこうと思います。
 
 
(こういうレビューみたいな記事はこのブログでは初めてですね。さてどうなることやら)
 
 
タイトルにも書きましたが、僕はこの『おもいで税関』が大好きすぎて、もう何度読み返したかわかりません。
読切のマンガ作品としては、今まで読んだ中で一番だと思っています。
 
賀来ゆうじさんのファンになったきっかけの作品でもあります。
 
 
 
『おもいで税関』は、ジャンプSQ.の新人漫画賞『Supreme Comic大賞』第14回の佳作受賞作です(同じ回で、山本久美子さんの『化物道』が同じく佳作を受賞しています)。
 
その後ジャンプSQ.セカンドに掲載され、2010年に発売された『ジャンプSQ.Comic Selection 2』に収録されました。
僕はこの『ジャンプSQ.Comic Selection 2』で『おもいで税関』を知りました。
 
 
少し話が逸れますが、『ジャンプSQ.Comic Selection』はVol.1からVol.7まで7冊あります。
 
第2巻となるVol.2には、賀来ゆうじさんの『おもいで税関』のほか、もう一人僕の大好きな作家である『あだしもの』山本久美子さん(現在は大野彰名義で活動)や、『γ─ガンマ─』『透明人間の骨』といった話題作を生み出した荻野純さんなど5名の作家の読切作品が収録されています。
 
どの巻も非常にレベルが高いです。
僕のおすすめは2巻と7巻です。
[追記]
僕が7巻だと思っていたのは5巻でした。
あと改めて読み返してみたら6巻もめちゃくちゃいいですね。
おすすめは2巻と6巻って言っておきます。いや5巻も7巻もおもしろいですが。
 
 
 

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さて、話を戻しましょう。
 
 
この『おもいで税関』、ジャンプ+で「賀来ゆうじ衝撃のデビュー作」と謳われていましたが、その通りだと思います。
これがデビュー作とは畏れ入ります。
 
新人の読切だからとみくびるなかれ。
デビュー作だからと侮るなかれ。
 
2009年の作品ですが、今だからこそいろんな人に読んでほしい作品です。
生きることに意味を見出すことが難しい世の中だからこそ、この作品は輝くのではないかと思います。
 
 
主人公は三上(ミカミ)という名の青年。
もう一人のメインキャラであり、この作品のキーパーソンでもあるのが、織機(オリハタ)という若い女性。
 
「ことの発端はオレが死んだ後にさかのぼる」という意味深なモノローグのあとページをめくると、二人が空港のような場所に立っている。
そんなシーンから物語は始まります。
 
二人はどうやら死んだらしいのですが、ガイコツみたいな姿の職員いわく「三上は間違って死んだため、生き返れる」とのこと。
一方、織機さんのほうは、大量の荷物(思い出)を持ち込んでいて、「これらすべてを天国には持っていけない」と言われてしまいます。
 
手ぶらの三上は、織機さんの荷物を半分持つことをもちかけますが……。
 
 
あまり僕があらすじばかり書いてもつまらないので、このへんにしておきましょう。
 
 
投げやりに生きているけれど、その姿にはリアリティを感じさせる三上。
健気で明るい、しかし重要な秘密を抱えた織機。
 
読んでいくとわかりますが、この二人のキャラクターがとても魅力的なのです。
 
 
僕が『おもいで税関』を初めて読んだのはたしか高2か高3のときで、そのときもその完成度の高さに感動したのですが、今読んでみるとまた違った感動がありますね。
 
奇しくも僕自身がそういう人生(詳しくは当ブログのほかの記事に書いています)を歩むことになったせいもあり、三上と強く重なるようになったというか。
三上の境遇や一つ一つのセリフに、より深く共感できるようになったというか。
 
 
 
言い忘れましたが、この記事はネタバレも含むのでご了承ください。
 
 
あと、作中の絵も貼りません。
 
できることなら貼りたいしweb掲載なのでスクショして貼りつけることもできるんですが、権利やら規約やらの問題がいろいろありそうだし3週間くらいで掲載期間は終了してしまうので、文章だけにとどめておきます。
 
気になる方はぜひ本編を読んでみてください。
 
[特別読切]おもいで税関 – 賀来ゆうじ | 少年ジャンプ+
 
 
 

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主人公の三上がどんな人物なのかは、序盤ではごく断片的にしか描かれず、織機さんとの会話の中で徐々に明かされていきます。
同時に、終盤の織機さんの描写につながる伏線が随所に散りばめられます。
 
作品のテンポを損なうことなく、キャラクターにもストーリーにも引き込んでいくという、巧みな構成です。
 
 
三上は結局生き返ることになるのですが、ただ三上が生き返ってめでたしめでたし、じゃないんですよね。
 
この時点では三上の心情にまだ目立った変化は現れていないので、ここで幕が下りたら「めでたしめでたし」感はあまりありません。
 
 
ここからのたたみかけるようなクライマックス。
これが『おもいで税関』をドラマたらしめるパートであり、この作品の最大の魅力だと思います。
 
 
終盤、ページをめくった直後に大ゴマで描かれる寝たきりの織機さんの姿に、まず絶句させられます。
税関にいた天真爛漫な女性とは似ても似つかない姿なのです。
 
織機さんが世間知らずだったのも、「自由で素敵じゃないですか。うらやましいな」「三上さんにはこれからがあります」「それでも、生きてます」などのセリフも、すべてこの伏線だったわけですね。
 
 
人違いかと思いいったん病院を出るも、ポケットに一枚の写真が入っていたことに気づく三上。
それは、未練を果たすために一時的に蘇ったときに織機さんの家で撮った写真でした。
 
二人は透明だったから写真に姿が写らなかったのですが、このことが「ミーコのお気に入り」のキャットフードを引き立たせる効果になっています。
一コマ目で描かれたキャットフードと中盤で気まぐれに撮った写真が、ここにきて大きな意味をもちます。
 
1ページ目の内容は時系列的には作品の中盤部分になるのですが、これを時系列通りに中盤で描いていたら、クライマックスでここまで強いインパクトを与えることはなかったでしょう(冒頭のつかみもおもしろくならなかったかもしれません)。
 
ポケットから現れた写真を見て号泣する三上の表情がまた素晴らしい。
この描写力は新人のそれじゃない。
希望と絶望が交ざった表情というか。言葉ではうまく表せないですね。
 
あのシーンが冒頭部分に挿入されたことが、この展開を最大限に活かすスパイスになったといえます。
 
 
夕陽のシーンでの「おでこにチュー」からの、三上との別れ際に呟いた、額に手を当てての「決めたわ。〝冥土の土産〟」というセリフ。
 
それを思い出し、三上が寝たきりの織機さんの額にキスをします。
 
これを見開きで見せるだけでもずるいのに、織機さんの目だけでわずかな表情を表現するコマ、そして次のページの織機さん(税関にいた姿)の笑顔。
これはもう反則です。
 
織機さんはこのキスをただ一つの〝冥土の土産〟として天国に持っていくことにしたということが、セリフなしで絵のみで明かされます。
 
 
ラストシーンの「世界じゃ1秒に二人の人が死んでいる」「1秒に二人が誰かの〝おもいで〟になる」というモノローグに僕は胸を打たれました。
 
「死」〝おもいで〟と表現するセンスが素敵です。
この作品を端的に表している部分だと思いました。
 
作中でずっと「思い出」と書かれていたのが、ここだけタイトルと同様の「おもいで」になっているのがまたいいですね。
 
 
そして最後の一コマ。
 
1ページ目で描かれたキャットフードが、三上と織機さんをつなぐ〝おもいで〟であり、三上がこの世界で生きていくという意志の変化を表すアイテムとして、物語を締めくくり余韻を残す役割を果たしています。
 
 
体が震えるほどの衝撃、そして感嘆。
最後の最後までやられました。
 
 
これは完全に僕の好みですが、「あの人はいなくなってしまったけれど、『あの人が生きていた証』や『あの人と一緒にいた思い出』はたしかに残っている」みたいな展開にすごく弱いんですよね。
 
 

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賀来ゆうじさんのデビュー作にして名作(だと個人的には思っている)『おもいで税関』
 
 
こうしてまた多くの人に読まれる機会に恵まれたこと、一ファンとしても嬉しく思います。
 
普段僕は好きな作品であってもそれを人に勧めることはあまりしないのですが、今回ばかりはやらなければと思い、こんな記事を書いてしまいました。
 
 
余談ですが、僕が書いた『Milky Way』という作品は『おもいで税関』の影響を強く受けています。
 
 
『おもいで税関』に見られた繊細な人間ドラマや心情描写は、『脱獄姫』『イビルハート』などその後の読切作品、以前の連載作『FANTASMA』、そして現在の連載作『地獄楽』にも通底していると思います。
 
脚本には細かいところで気になる部分もあります(「午前7時から午後4時44分が『半日以上』」とか)が、それを補って余りある構成の巧さ、ストーリー全体のテーマ、独特の味があるタッチ(『地獄楽』ではさらに磨きがかかっています)などに大きな魅力があるのではないでしょうか。
 
 
賀来さんの描く物語の多くは、主人公が決して善良な人ではないんですよね。
 
『おもいで税関』では生きる希望を失ってクスリで病院送りになった青年だし、『地獄楽』に至っては死刑確定の大罪人です。
(さらに『FANTASMA』ではマフィア、『イビルハート』では悪党だったりします)
 
彼らは決して少年マンガらしくないタイプですが、心の底に秘めていた想いや信じるものがまっすぐで、あたたかくて、それが少年マンガらしさにつながっています。
 
 
賀来ゆうじ作品は言ってしまえば、邪道な主人公が生み出す王道の少年マンガといったところでしょうか。
 
 
 
『おもいで税関』が好きすぎるので、ジャンプ+掲載を(勝手に)祝して(勝手に)三上と織機さんを描いてみました。
 
omoidezeikan
 
 
賀来さんが現在連載している『地獄楽』も、毎週楽しみにしています。
 
せっかくなので、画眉丸と佐切も(勝手に)描いてみました。
 
jigokuraku
 
単行本1巻が現在発売中(発売後即重版がかかったそうです)、2巻は2018年6月4日発売予定とのこと。
 
 
「クローズドサークル」「バトルロイヤル」「江戸時代もの」「バディもの」など、少年マンガの王道的要素やワクワク要素がふんだんに込められています。
絵には賀来さん独特の味と迫力があり、もちろんキャラクターもみな個性的かつ魅力的で、忍び寄るバケモノは絶妙にキモい。
 
最新16話でまた新たなキャラが登場し、今後の展開がいっそう楽しみになってきました。
 
 
それでは、今回はこのあたりで。
 
 

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