2020/02/01

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【小説(サンプル)】『ぺるそな@ハイドアンドシーク』第5章 ともだち@クエスチョンマーク ②

 
BOOTHなどで販売している小説作品『ぺるそな@ハイドアンドシーク』のサンプルです。
 
前 → 『ぺるそな@ハイドアンドシーク』第5章 ともだち@クエスチョンマーク ①
 
最初 → 『ぺるそな@ハイドアンドシーク』プロローグ かくれんぼ@もういいかい
 
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◆ 第5章 ともだち@クエスチョンマーク ②

   @

 その日、冷蔵庫の食材や飲み物のストックを補充しに近所のスーパーに寄ったら、朝陽もちょうどその店にいた。
 朝陽もご飯の買い出しに来ているようだった。私は野菜や肉や調味料とかがメイン、朝陽は冷凍食品や出来合いのお惣菜やカップ麺といった既製品がメインだ。こういうところにも私たちの性格が出る。
 数日前に南くんに会ったことを、朝陽にまだ話していなかったことに気がついた。隠すようなことじゃないだろう。というか、朝陽には言っておくべきだろう。
「そういえばこの前、南くんと会ったよ。ほら、あの南耀太」
「アイツと? なんでまた?」
「就活の帰りに、偶然ばったり。南くん、就職して東京来てるんだって」
「ふーん、アイツも東京に。……そっか」
 おや、と思った。高校時代の友人の話だからもっと食いついてくるかと思ったら、妙に反応が薄い。
「そうだ夕凪、これ先週買ってみたんだけど、めっちゃおいしいんだよ!」
 朝陽は持っていた買い物カゴからレトルトのハンバーグを取り出した。
 わざと話題を変えているようにも見えた。
「またそんなのばっかり」苦笑いして、ひとまず朝陽に会話を合わせることにする。「もっとちゃんとしたごはん食べなよね」
「いやレンチンだけであのおいしさが味わえるのは神だよ? ってか、あたしのキッチンの惨状知ってるでしょ?」
「自覚あるなら片づけなよ」
「料理できなくてもおいしいものが食べられちゃうシステムに問題があるんすよ夕凪さん。いやぁレトルトとか冷食とか、ほんとズボラ女子の強い味方だわー」
 容姿端麗で、教養があって、友達も多い。そんな朝陽の唯一ともいえる欠点は、家事が壊滅的にダメなことだった。いわゆる残念な美人というやつなのだ。
 一方で私は、家庭に無頓着な両親の間に生まれたからか、掃除から洗濯から料理から、家事全般をひととおりこなせる子に育っていた。
 私たちはとりとめのない会話をしつつ、ほしいものを自分の買い物カゴに入れていった。
「あ、そうだ」レジに並んでいるときにもう一度、私は思い出したように切り出した。「南くんとライン交換して、今度また会えないかって誘われたんだけど」
 続けて、「朝陽も一緒にどう?」と、ちょっと鎌をかけてみる。
「……あ、いや、あたしは別にいい」
 やっぱり、どこかぎこちない。朝陽は動揺とか緊張とか、そういう言葉とは縁がないタイプのはずだ。そんな朝陽の表情がこわばっていたのを、私は見逃さなかった。
「それより、月末のオフ会、夕凪も来れるよね?」
 朝陽が南くんの話題を避けようとしているのは明らかだった。
 気がかりではあるけど、経験上、こういうときは深掘りするべきではないこともわかっていた。
「大丈夫。その日は予定空けてるよ」

  (中略)

 オフ会のあと、私は朝陽の部屋へ行くことにした。24時にあるという《シーハイ》の告知も朝陽の部屋で一緒に見てしまおうと思っていた。
 ……なんだけど。
「うえぇ……これ最後に掃除したのいつ?」
 玄関を一歩上がった瞬間、目に飛び込んできた光景に眉をひそめた。
 廊下の隅にはゴミが溜まっているし、キッチンではガスコンロが物置きと化しているし、そもそも足の踏み場が少ない。私の部屋と同じ間取りとは思えないレベルだ。……まあ、こんなもんだとは思ってたけど。
「いつだったっけ」悪びれる様子もなく朝陽は答え、私を部屋の中に招き入れる。「たぶん、前に夕凪が掃除してくれたとき」
「それ3月の頭とかじゃなかったっけ?」
「まだ2カ月経ってないじゃん。大丈夫大丈夫」
「大丈夫じゃない! ほら掃除!」
 一人暮らしを始める前から私たちはこんな調子だから、今さら苦痛になんて思わない。私としては自分の部屋を片づけるのと感覚的にさほど変わらなかったし、朝陽だって、掃除してと言えばやや雑ではあるけど掃除してくれる。
 それに朝陽は、自分の部屋はとことん散らかすくせに、私の部屋を散らかすことはなかった。自室が汚いのはあくまでそこが気を遣わなくていい場所だからで、むやみに他人の場所を汚すようなことはしない。
 傍若無人にふるまっていいところとそうでないところくらい、朝陽はちゃんとわきまえている。だから私も、特に何も言わないでいる。
 リビングにはクローゼットとか本棚とかキャビネットとか、一応ちゃんと収納道具はあるんだけど、それらがほとんど機能していない。ソファやローテーブルにはハンガーに掛けられたままの服が無造作に置かれているし(その中には下着類もある)、そもそもこの服を洗ったのだって何日前になるのかわからない。
 大学院に入ってまだ1カ月だというのに、さっそく本や論文が机とその周囲の床に散乱している。それだけならまだしも、アクセサリーや化粧品、冬物の小物までそのへんに転がっている。CDやブルーレイなんかは踏まないように端に寄せられていたけど、それも無造作に積み上がっていて、整理されている感じじゃない。
 こんな部屋なのにベッドの上に寝るスペースだけは常に確保されているから、なんというかたくましい。ちなみに私が朝陽の部屋で寝るときには、床に散らかっているものを適当にどかして私の布団を敷くスペースを作ってくれる。
 布団のような大きいアイテムを除いて、たいていの小物は自分の部屋から持ってくるのが私たちの暗黙のルールになっているんだけど、ありがたいことにマスクだけは朝陽の部屋にも常備されていたりする。
 床に散らかっていたものを朝陽に整理してもらい、いらないものを私がゴミ袋に突っ込んでいく。それから床に掃除機をかけて、ついでに水回りも掃除することにした。朝陽にお風呂とトイレを掃除してもらい、私は台所をピカピカにする。

 掃除がひと段落ついたのは、間もなく日付が変わろうという頃だった。
「ギリセーフ! あと1分だよ夕凪」
 先に自分の持ち場を終えた朝陽が、ベッドに寝転がってスマホをいじっていた。
「あぁ、《シーハイ》の」と私。「でもお知らせって何だろ。やっぱCDかなぁ?」
 何とはなしにベッドに腰かけた。
 ちょうどそのとき、日付が変わったようだった。
「…………!?」
 朝陽が声にならない声をあげたのがわかった。ただならぬ気配が伝わってきて、私は朝陽のほうを振り向いた。
「……朝陽?」
「なに、これ……?」
 スマホを手に、朝陽は呆然としていた。私は彼女の肩越しに画面を覗き込んでみた。
 表示されていたのは、《シーハイ》公式サイトの新着情報ページだった。
『シークアンドハイドよりファンの皆様へ重要なお知らせ』という見出しとともに、書かれていたのは──
「うそ…………」
 さすがの私も言葉を失った。

 それは《シークアンドハイド》の、無期限活動休止の告知だった。

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続きは製品版でお楽しみください。
 
 
解説のような何か(ネタバレ含む)

『ぺるそな@ハイドアンドシーク』あとがきのようなもの


 
 

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