【小説(サンプル)】『ぺるそな@ハイドアンドシーク』第4章 色恋@レジスタンス ①

ぺるそな@ハイドアンドシーク

 
BOOTHなどで販売している小説作品『ぺるそな@ハイドアンドシーク』のサンプルです。
 
前 → 『ぺるそな@ハイドアンドシーク』第3章 追憶@フェイスレス ②
 
最初 → 『ぺるそな@ハイドアンドシーク』プロローグ かくれんぼ@もういいかい
 
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◆ 第4章 色恋@レジスタンス ①

 4月に入った。まだ春休み期間ではあるけど、私は就活をしていた。
 とある企業で、適性テストからの面接という長丁場を終えて外に出ると、薄暗闇が私を迎えた。帰宅ラッシュの時間帯になっていた。夜風は冷たくて、まだトレンチコートはクリーニングに出せそうになかった。
 マスクをつける。肩の力が抜けたと同時に、ため息が出た。
 テストでも面接でもそうだけど、受ければ受けるほど、そもそも私には社会でやっていける適性があるのかな? というレベルから疑わしくなってくる。
 私は「したい」よりも「したくない」で動く。「なりたい」よりも「なりたくない」に左右される。
 だから、「絶対に嫌だ」とか「めちゃくちゃ自分に合わない」と感じる企業でさえなければわりとどこでもいい、というのが本音だった。
「何をしたいか」「どうしてここを選んだか」という前向きな姿勢を求められる就職活動というイベントは、根本的に私とは相性が悪いのだ。
 私はどうして仮面浪人をしたんだろう、と今になって考える。あの頃、周囲には「やっぱりあの大学に行きたいから」と言って聞かせた。そのときはほとんど迷いなんてなかったはずだった。
 だけど根底にあったのは「この大学に行きたくない」という気持ちだったのだ。この人たちと一緒にいたくない、こんなことを勉強したいわけじゃない、ここは私のいるべき場所じゃない。私を突き動かしていたのは、そんな否定的な感情だった。大学で学んだ先にどんな進路があってどんな大人になりたいかなんて、考えたこともなかった。
 受験し直したことを後悔はしていない。だけど、もっと目的意識をもっていればよかったかな、という後悔は、ないと言ったら嘘になる。
 面接は自分がどんな人間かを企業に知ってもらう機会、などと言い聞かせられたけど、実際に何度か経験してわかった。
 西野夕凪という人間の構成要素が書かれたカードの、どれを見せてどれを隠しておくか。その見せ方がうまくハマれば勝ち、ハマらなかったら負け。そして、面接をする企業側にも同じことが言える。社内の雰囲気や面接官の印象で会社を選ぶ権利が、学生の側にはあるのだ。
 面接って、そんな駆け引きだ。

 頭の中でぼやきつつ歩いていたら、見覚えのない桜並木の道に来ていた。どうやら行きのときと違う道に出てしまったらしい。私はスマホを取り出し、グーグルマップを立ち上げた。
 東京の桜は今が見頃だった。時期が時期なので、新入社員らしき姿も目立つ。彼らにはこの桜はお似合いだろうな、なんて思ったけど、画面の地図を見ながら人波を縫っていく私に、ゆっくり桜を眺めている余裕はなかった。
 ギリギリ渡れるかな、と思って小走りで近づいた横断歩道は、直前で信号が赤に変わってしまった。しかたなく立ち止まる。
 ふと横を見ると、夜桜の下で若い男女のカップルがキスをしていた。
 おいおい公衆の面前だぞ、って顔をしかめてしまう。こんな光景を見てロマンチックだと感じるような心は、とうの昔に捨て去ってしまった。いや、もとから持っていなかったかもしれない。
 私はキスというものをしたことがない。というか、恋愛というもの自体、経験がない。生まれ育った家庭環境のせいか恋愛にあまりいい印象がないし、第一、こんな顔だからしょうがないよね、と思っていた。
 この歳になって恋愛したことないのはヤバいよ、って言われたこともあるけど、そんな危機感だけで恋愛に対する悪いイメージを払拭できそうになかったし、泥沼に足を突っ込んでまで彼氏なんて作りたくなかった。
 そんなことを考えていると、左斜め上のあたりから視線を感じた。
 そちらに顔を向けると、スーツ姿の青年と目が合った。
「西野? 西野夕凪だよな?」
「えっと……」
 見たことある気がしたけど、すぐには思い出せなかった。
「俺だよ、(みなみ)耀太(ようた)。高1のとき同じクラスだった」
 みなみ、ようた。私は記憶を掘り返してみた。
 数秒ののち、脳内検索がヒットした。高校時代に茶色く染めていた髪を今は黒くしているけど、顔そのものはほとんど変わっていなかった。男子としては平均的な身長で、スクールカースト的にも真ん中くらいにいた優男、という印象で頭に残っていた。

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