2020/01/08

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【小説(サンプル)】『ぺるそな@ハイドアンドシーク』第3章 追憶@フェイスレス ①

 
BOOTHなどで販売している小説作品『ぺるそな@ハイドアンドシーク』のサンプルです。
 
前 → 『ぺるそな@ハイドアンドシーク』第2章 伊達マスク@はじめまして ②
 
最初 → 『ぺるそな@ハイドアンドシーク』プロローグ かくれんぼ@もういいかい
 
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◆ 第3章 追憶@フェイスレス ①

   @

 実家では、私は毎日のように地獄絵図を見せられていた。
 父と母の両方が家にいれば、子供の前であろうとお構いなしに夫婦喧嘩が発生していた。そして片方しかいないときには、両親は私で日々の鬱憤を晴らしていた。自身の中の濁った感情を、それぞれ相手がいないときに娘に撒き散らしていたのだ。
 そのくせ二人して外面だけはよく、家の外では仲睦まじい夫婦を演じていたからタチが悪い。そんなふうに都合よく偽ろうとするから余計にストレスが溜まっていくんじゃないの、と私は冷めた目で見ていた。
 こんなふうにはなりたくない、と子供心に思うようになった。どうして言い争いをするんだろう。どうして我を押し通そうとするんだろう。どうして険悪な空気を漂わせてまで、一緒にいることを選ぶんだろう。
 揉めるくらいならこっちから先に引く。そうすればすべて丸く収まる。衝突なんて避けて、穏便に事を済ませるべき。それが世の中を渡っていく、賢いやり方なんじゃないの? そんな意識が、いつからか私の心には芽生えていた。
 彼らの話は、家のことや仕事のことから始まる場合が多かった。だけど熱が入ってくると、決まって母は父の、父は母の愚痴を語った。中でも気になったのは、父は母のことを「好き」と言っていて、母は父のことを「嫌い」と言っていたことだ。
 結婚は人生の墓場、という言葉はそのとおりだと確信したし、恋愛ってのは泥沼に足を突っ込むような行為でしかないんだな、と思った。
 娘が二十歳を過ぎてもなお妻のことを好きだと言っている父は、私が物心つく頃から家庭のことや自身の見た目はまったく顧みない。
 私が物心つく頃には夫が嫌いだと言っていた母は、娘が二十歳を過ぎてもなお愛人を作っては密かに会っている。
 父が家事や育児に無頓着だったからか、母は私に干渉してくることも多かった。顔に痣のある娘を産んでしまったことは少なからず気にしていたようで、「こんな顔に産んでごめんね」と口癖のように言っていた。
 まあそれについても、私への罪悪感より自身の世間体を気にしているような態度が透けて見えたけど、私は気づかないふりをしていた。
 小さい頃から、母はいろんな病院に私を連れて行った。母は、「生まれつきのものだからって放棄しないでよ!」とか「あんたが匙を投げたら誰がこの子の顔を治すのよ!」とか「あの薬効かないんだけどどういうこと!?」とか、病院の先生に向かって喚き散らしたこともあった。
 対して私は、やめてくれ、といつも思っていた。正直なところ、私はある程度の年齢になってからは痣が治ることなど諦めていた。
 どうせ原因はわからないし消える見込みもないから、マスクで隠すことができればそれでよかった。
 両親はどうしようもない人たちだった。父も母も、子供より自分優先という人だった。
 だから私は、手のかかる子にならないようにふるまうべきなのだと、いつからか当然のように受け入れていた。
 私は今、大学に行かせてもらえて東京で一人暮らしをさせてもらえて、朝陽とも一緒にいることができている。これはひとえに、私が「いい子」でいたからだと思っている。
 親との仲は決して良好ではなかったけど、衝突することもなかった。
 衝突を繰り返していたら、今みたいな環境にはいられなかったよね。

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次 → 『ぺるそな@ハイドアンドシーク』第3章 追憶@フェイスレス ②

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